2014年9月6日開催、2014年度・第4回(通算57回)「集い」報告書

2014年9月6日開催、2014年度・第4回(通算57回)「集い」報告書
日時: 10月26日(日)14:00〜16:30
会場: 大村コミセン(2F)第3会議室
内容:10周年記念講演会
     演題 「憲法改正と私たちの責任」
     講師: 前原清隆 日本福祉大学教授

前原清隆先生プロフィール

 長崎総合科学大学教授。2004年、長崎県九条の会事務局長。2007年〜、日本福祉大学教授。 「日本福祉大九条の会」世話人。 最近の著作として、長谷川正安先生追悼論集『戦後法学と憲法』に寄稿した「『未来への責任』と憲法」。「憲法とそれぞれの人権」(法律文化社 2014年)
 

 午前中の雨は止み、秋空が広がりました。上記「講演会」には61名の方々に参加いただき、盛会でした。準備いただいた平明かつ簡潔な資料によるお話は大変分かりやすく、T時間30分を短く感じる内容に溢れていました。

 「改憲」を党是とする自民党および安倍政権が「憲法九条」を骨抜きにし、民意に背を向けてまで同盟国の戦争に介入できる「集団的自衛権行使容認」を閣議決定した下剋上ともいうべき手法を厳しく指摘、糾弾されました。

 一方、過去に向き合う私たちの責任および未来への責任についても、2011年8月9日の長崎平和宣言にある「被爆国の私たちが、どうして再びで放射能の恐怖に脅えることになってしまったのでしょうか」との文言を引用し、未来への責任から国民それぞれが目をそらしていたことによるものではないかと指摘されました。

 憲法学者の樋口陽一先生が今から20年前に問いかけられた「仮にできるとしても、それ以上はみんなが慎まなければいけない資源の浪費どう考えるか」という視点で憲法25条を受け止めなおす必要があるのではとも投げかけられました。 尚、今回の「講演会への案内」に書きました、安倍首相に「ニヒリズム」を感じると述べられたのは樋口陽一先生です。

 未来へ向き合う道は、自民党憲法改正草案に示されているような日本国憲法の「改正」ではなく、日本国憲法を生かすことでこそ開けてくるのではないかと前原先生は結ばれました。

 「平和観についての世論調査(2013年)」の結果から読み取れる「薄れゆく戦争の記憶」といい、広島、長崎への原爆投下日時や、日米開戦日を知らない若者の多さに会場からは驚きの声があがりました。 先生への感謝の気持ちが込められた感想文を以下に要約してお礼にかえさせていただきます。

感想文(順不同)
1 頭の中をすっきりまとめていただきました。お友達をお誘いして良かったです。
2 貧困の格差拡大。年金者と若者を対立させる、貧困層の中にくさびを打ち込む。今、危ない。声を挙げなければと思う。
3 闇の支配勢力ために九条を改悪して「戦争する国」に誘導。暴走する安倍政権を打倒しなければならない。
4 次の世界へ語り継ぐことが如何に大切かを認識しました。ありがとうございました。

5 若者は政治に関心がないのかと思っていましたが、実は日本全体が憲法の大切さを十分理解していないのだと反省します。意図的に歴史教育をゆがめる文部行政が行われてきたのではないかとも思いました。
6 学生の頃、「長谷川正安先生」の本を読んだのですが、久しぶりに目にしたお名前です。高校で国語の講師をしていますが、「えっ、日本はアメリカと戦争したのですか」と言う生徒にこちらが驚きます。 日本史は近現代史から先に教えていくべきだと思います。

7 過去と未来への責任の話は目にウロコでした。とても分かりやすい内容で、知らないことが多すぎると感じました。一人ひとりがもっと知っていく必要がある。そうでないと騙されてしまうでしょう。
8 新聞で講演会を知り参加しました。子供たちの未来は私たち大人の責任であることは誰でも分かっているはずですから   先の事を考えていかないといけないと改めて感じました。色々なお話ありがとうございました。

9 「過去に対する責任」と「未来に対する責任」を強調されたのは分かりやすく、頭の中が整理されたように思います。 10 我々が生きている間にも戦争になりそうに感じられます。何とか自民党の横暴を止めたいです。

事務局より
  地球上に住む生物の中で一番知恵があるのは、賢いのは果たして人間なのでしょうか。今回、紹介された樋口陽一先生の言葉は人間の欲の深さ、自己中心的な生き方に危うさを感じ、「足るを知る」 ことの大切さを訴え、警鐘をならされたものだと思います。

 足ることを知らない人間はありとあらゆる事柄に際限なく欲望を膨らませ、世界のあらゆる地域で長きに亘り不 毛の争いを続けてきたのです。 加えて、他の生き物の生存さえも危うくしている原因である地球の温暖化も焦眉の課題です。 実は人間こそが地球にとって一番愚かで且つ迷惑千万な生き物かも知れません。

 
そうした自覚と反省の必要さを、フランスの文化人類学者で構造主義の父、故クロード・レビィ=ストロース氏 はその著書「熱き熱帯」「世界は人類なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」と人間の奢りを静かにたしなめておられるのでしょう。

 今回の講演で心に留め置きたい言葉を三つ紹介させていただきました。
・日本人は過去の戦争を通じて、戦争に参加することが何を意味するか分かっていると思う。忘れているのなら、思い出して議論すべきだ。そうすれば政治に対して責任ある行動をとれると思う。 -----デンマークのドキュメント映画「アルマジロ(アフガニスタンにある軍事基地)」の若き監督ヤヌス・メッツ氏の言葉

・どの国にも国のために倒れた人に感謝を捧げる墓がある。さもなくして、だれが国に命を捧げるか。-----1985年、靖国参拝に対する当時の中曽根首相の言葉

・靖国神社は、日本を戦争できる国にするための神社である。靖国神社は「次の戦争」のための神社であらねばならない。-----小林よしのり氏著「保守も知らない靖国神社」より

 10周年記念講演会に多くの皆様方に足をお運びいただきありがとうございました。 日本の、そして人類の平和な未来は今を生きる私たち一人ひとりが責任を負わなければなりません。 10周年を新たなスタートに「大村市九条の会」は皆様方と共に平和憲法を守る運動を続けてまいります。 これまでに倍するご支援、ご協力を宜しくお願い致します。  

講演会のお知らせ  長崎県九条の会「講演会」
日時 11月22日(土)12;30開場 13:00〜15:30
会場 長崎県総合福祉センター 5F 大会議室

講師 浜 矩子氏 同志社大学大学院ビジネス研究科 教授
演題 国家から国民を取り戻すために
入場料 一般 1,000円  高校生以下 500円

(掲載日:2014年10月30日)