2009年度、「大村市九条の会・五周年記念講演会」


「大村市九条の会・五周年記念講演会」報告

爽やかな秋晴れに恵まれた10月31日(土曜日13:30〜16:30)、先に当ホームページでご案内しました「大村市九条の会立ち上げ五周年記念の講演会」を開催致しました。参加者41名。(「大村市九条の会」の設立は2004年10月26日です)  講演は、2008年4月17日に名古屋高裁で言渡された「イラク派兵違憲判決・判決文」と言う小冊子を使い、参加者が読み合わせしながら進みました。

  講師の魚住昭三弁護士は難解な法律用語が並ぶ判決文を解説する一方で矢継ぎ早に質問を発すると言う方法でいつの間にか参加者を熱く引き込んで行かれました。 講演会と言うより学習会と言った雰囲気で質問やら意見が次々と出され盛り上がりました。 日本は民主主義の国で、三権分立のはずだがとの質問には「日本には三権分立などなく、行政一権状態」であり、「日本は民主主義国家にはほど遠い状態」であるとの趣旨の話もありました。

  確かに「三権分立」「民主主義」の衣は着ているように見えても、特に憲法問題に腰の引けた判決が続く司法の現状を見れば決して的外れな指摘ではないのかも知れません。 そうした中で出された「イラク派兵違憲判決」は正に「画期的判決」と言えます。 判決文の一部を次ぎに抜粋します。 「現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲として、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる」と言うものです。(「」の一語が重要だそうです)

 また、控訴人の損害賠償請求については、「損害賠償に込められた切実な思いには、平和憲法下の日本国民として共感すべき部分が多く含まれているということができ、決して、間接民主制下における政治的敗者の個人的な憤慨、不快感又は挫折感等にすぎないなどと評価されるべきものではない」と踏み込んでいます。

 だが続きます。「しかしながら、・・・・、控訴人らには、民事訴訟上の損害賠償請求において認められるに足りる程度の被侵害利益が未だ生じているということはできない。よって控訴人らの本件損害賠償は、いずれも認められない」として原告の控訴を棄却しています。敗訴です。

 確かに敗訴ではあるが、しかし損害賠償を棄却することで国側が完全勝訴し、勝訴した国側の上告を封じる意味が行間に込められていると受け止めるべきであるとの魚住弁護士の値千金のプロならではの解説がなされました。 国に対してこうした異例の判決が下された背景には原告となった3000名を超える平和を希求する市民の粘り強い闘いがあったのだとの示唆に富んだ話もありました。

  「大村市九条の会」もイラク派兵を9条第1項に違反とする判決を心強い後ろ盾とし、日本の、世界の平和を危うくする「改憲派」勢力と厳しく対峙して行くことの必要性を再確認できた意義深い講演会でした。 


(掲載日:2009年11月5日)