憲法記念日に寄せて    2012年5月3日   「大村市九条の会


 

 「日本国憲法」が置かれている立ち位置の危うさは尋常でなく、「護憲運動」の前途多難さを改めて再確認のお役に立てばと憲法記念日の今日、後段の「参考資料」を添えたメッセージをお届けさせていただきます。さて、先のフランス大統領選挙結果について、同国の社会学者が「大衆の不満が渦巻く中ではポピュリズムが深まり、衆愚政治に陥りやすい。それを阻むのは難しい」と、短い言葉ではありますが鋭く警告しています。

  最近の日本もそれに酷似した極めて憂慮すべき状況にあるのではないでしょうか。日本の先行きを大きく左右する分かれ道にさしかかっていると言っても過言ではないと思われてなりません。今の日本で「ポピュリストの双璧は、石原都知事、橋下大阪市長でしょうか。 二人に共通するのは「露骨な憲法敵視発言」であり、「君が代」強要に象徴される教育の右傾化であることは皆様方ご存じの通りです。

  石原氏の「占領憲法(日本国憲法)無効破棄論」(4月16日:ワシントンにおける講演)、橋下氏の「憲法九条を変えられないような日本には住みたくない」などの両氏の発言につきましては参考資料をご覧いただきたいと思います。これらは発言のホンの一部に過ぎないはずです。

又、連合国とのサンフランシスコ講和条約締結・米国との旧安保条約発効から60年の節目となる今年の4月27日に自民党は「新憲法草案」を発表。そして民主・自民・公明・みんなの党などの有志が27日に横路衆議院議長に「憲法改正原案」を提出しております。大村自衛隊もこの28日に60周年式典を開催しました。

こうした中、 「石原氏率いる新党」、「維新の会」が次の選挙を経て、国会に勢力を拡大し現在の改憲派議員と共同歩調をとれば、世界に誇るべき「日本国憲法」は風前の灯火でしょう。豊富な資金で情報を操作し、国民の目をそらし、「戦争をする国」を目指す改憲勢力の動きに棹させるのは、微力ながらも「平和」を願う一人一人の結集しかありません。

  今のままでは「衆愚政治」という取り返しのつかない日本になり兼ねません。参考資料6)のように多くの若者を無意味な死に向かわせるような時代の到来を招くようでは今を生きる私達は先の大戦の責任者と同じ過ちを犯すことになります。同じ轍を踏むことは許されません。 危機は目の前です。周りの人達にも、この差し迫った危機を訴えて護憲の輪を拡げていきましょうとお訴えさせていただきまして、「大村市九条の会」からの連帯のメッセージと致します。


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**参考資料
1)石原都知事関連資料 ( 「石原都知事憲法発言」で検索すると)
  (1)2012年4月22日 ワシントンにおける講演で 「占領憲法(日本国憲法)無効破棄論」「尖閣諸島購入」について語っています。 *動画でも視聴できます。
  (2)2月21日。東京都議会自民党の「新春のつどい」挨拶で 「改正には国会の議決がいる。自民党に頑張ってもらい破棄したらいい」
  (3)新潮45 4月号 ・ 2012年3月5日、「日本よ『歴史的に無効な憲法の破棄を』」  ・福田和也氏との対談で「今こそ国が号令をかける時」

  (4)4月8日。陸上自衛隊第1師団 50年式典」挨拶で 「敗戦後の占領統治のために作られた憲法が独立後もまだ続き、その拘束のなかで国を守る軍隊が自由に行動できない。こんなものは無効で破棄し、みんなで新しい憲法を即座に作ったらいい」
  (5)その他
 ・都教育長の外部登用について:「破壊的教育改革」を掲げ、「これまで戦争に対する史観(自虐史観)を一方的に強制してきたのだから」
 ・日本だって核実験をやればいい。プルトニウムは山ほどある。(国内10屯 海外35屯)
 ・ 閣僚が靖国参拝しないことに対して:「あいつら日本人じゃないんじゃないか」

2)
橋下大阪市長関連資料
  (1)憲法九条を変えられないような日本には住みたくない。
 (2)「がれき処理」になったら一斉に受け入れを拒絶。全ては憲法九条が原因だ。
 (3)憲法九条は国際貢献とか、他人を助けるときには自分の嫌なことはやらないという価値観。

 (4)安全保障問題の根源は憲法九条の価値観だ。
 (5)憲法九条がなかった時は、他人のために汗をかこう、場合によっては命の危険があるかもしれないけど、負担せざるを得ないとやってきた。 
 (6)大阪市において「思想調査」を実施。

3)両者以外の重要発言

   「原発は潜在的核抑止力」発言  石破 茂元防衛大臣および「読売新聞 昨年9月7日付け社説」

4)護憲派の動き
 1、 憲法改悪を目論む勢力の中心政党である自民党では以下の改正案を明示。
   (1)天皇を「元首」と位置付け。
   (2)自衛隊を「国防軍」と規定。
   (3)安全保障分野では「国防軍の発動」を明記し、「軍法会議」の設置を盛り込む。
  
   (4)国民の権利では「結社の自由」「公務員の労働基本権」の制約や「家族の尊重」を盛り込む。   
   (5)憲法改正の発議を現行の「衆参3分の2」「過半数」に緩和することを盛り込む   
   (6)緊急事態に備えた「有事法制」規定を導入し、政令による個人の権利制限を可能にする。

 2、同日、民主・自民・公明・みんなの党の有志が一院制を内容とする「改憲案」を国会に提出。

 3、たちあがれ日本の「改正案」では、皇位継承に関して「男系男子」を明文化し、憲法改正の発議が3分の2以上の場合は「国民投票」は不必要としています。

5)ポピュリズム
 政治に関して理性的に判断する知的市民よりも、情緒感情によって態度を決める大衆を重視し、その支持を求める手法あるいはそうした大衆の基盤に立つ運動をポピュリズムと呼ぶ。ポピュリズムは諸刃の剣である。庶民の素朴な常識によってエリートの腐敗や特権を是正するという方向に向かうとき、ポピュリズムは改革のエネルギーとなることもある。

 しかし、大衆の欲求不満や不安をあおってリーダーへの支持の源泉とするという手法が乱用されれば、民主政治は衆愚政治に堕し、庶民のエネルギーは自由の破壊、集団的熱狂に向かいうる。例えば、共産主義への恐怖を背景にした1950年代前半の米国におけるマッカーシズムなどがその代表例である。民主政治は常にポピュリズムに堕する危険性を持つ。そのような場合、問題を単純化し、思考や議論を回避することがどのような害悪をもたらすか、国民に語りかけ、考えさせるのがリーダーの役割である。 ( 山口二郎 北海道大学教授 )

6)特攻隊遺詠集  1999年 PHP研究所
  (刊行のことばの一部・・・・今日の平和の基礎が、斉えられた所以を知って欲しい)
  1945年 沖縄作戦 巻頭短歌
   「折に触れ時にあたりて思うかな老いゆく父母はいかにあるかと」   杉山喜一郎  22歳

  *沖縄作戦に散った隊員 上原良司氏(22歳)の「きけわだつみのこえ」巻頭所感
   「明日は自由主義者が一人この世から去っていきます」

掲載日:2012年5月3日