憲法記念日に寄せて    2013年5月3日   「大村市九条の会


 恒久平和を願って「九条の会」に集う全国の皆様方は現憲法が今や危険水域にあることを身に滲みてお感じのことと思います。

 言葉の持つ力は絶大です。慰めの言葉、称賛の言葉、愛を伝える言葉など人間関係に潤いを与え、勇気を与えるなど重要な役目を果たしています。 しかし、同時に諸刃の剣でもあります。フランス革命当時に活躍した政治家タレーラン「言葉が人間に与えられたのは、考えていることを隠すため(偽るためである)」という厳しい格言を残しています。

 優しい響きを持つ美しい言葉には細心の注意を払う必要があります。 政治の世界や金儲けの世界ではこの格言が普通に横行していると考えるのが賢明なのかも知れません。言葉は時として危険な武器、凶器にさえ形を変えます。改憲論者の言葉の裏に隠された真の意図を見抜く冷静な洞察力が国民一人一人に求められているのではないでしょうか。

 4月28日、「主権回復の日」に美辞麗句で飾られた首相式辞内容と「戦争の出来る国」を目指す改憲論が一体どう結びつくのか不思議です。 改憲すべき理由の一つにアメリカによる「押しつけ憲法論」がありますが、彼等が拠って立つ政策の多くはアメリカの押しつけそのものだと耳にします。

 財政難に苦しみ、戦費軽減のために日本に「改憲」を押しつけ、世界で一緒に戦って欲しいと願っているのがアメリカです。 沖縄県民の怒りの声を無視した普天間基地移設といい、唯一の被爆国でありながら安保政策と合わないとの理由で核不使用共同声明に署名さえできない国が、アメリカから独立した国家と言えるのでしょうか。 「靖国神社」に参拝する政治家諸氏はもっともらしい「参拝」の理由を口にしますが、誓う言葉は「二度と戦争をしません。皆さんの命を無駄にしません」以外にあり得ましょうか。

 嘗て「靖国」の存在意義は中曽根元首相の「命を投げ出した兵士が英霊として祀られないのでは、国の為に殉ずる若者はいない」との言葉に集約されているのではないでしょうか。

 4月23日付け「産経新聞」の信じがたい報道をご存じの方も多いと思います。 産経新聞とFNNが合同で実施した世論調査で「憲法改正に賛成」61%、で「反対」26.4%を大きく上回ったと「見出しで」で報じる一方、本文では「ただ、96条を改正し、発議条件を「三分の二」から「過半数」に緩めることには44.7%が「反対」で、「賛成」44.1%をやや上回ったと書かれているのです。 改正を誘導する意図なのか、念の入ったことに記事の横に示された三つの円グラフには「発議条件」のアンケート結果は示されていません。

 こうした情報環境の中で「憲法九条を守りたい」との想いだけでは7月の参院選は昨年暮れの総選挙結果と大差ないことは明らかと思われます。 憲法を守り抜こうという声を周りに拡げる正念場を迎えました。そうした自覚を持たねば辛い冬の時代の入り口が待っていることを覚悟せねばなりません。

 ドキュメンタリー映画「アルマジロ」はアフガニスタンで治安維持にあたるデンマーク兵士を追いながら、自国の領土や国民を攻撃しない国へ、なぜ兵士を送るのかを問う内容で、日本にとって示唆に富んだ作品だと言えます。

 監督、デンマークのヤヌス・メッツ氏(1974年生)はインタビューで「日本人は、過去の戦争を通じて、戦争に参加することが何を意味するか分かっていると思う。忘れているなら、思い出して議論すべきだ。そうすれば、政治に対して責任ある行動を取れると思う」と結びます。 (2013年4月5日 朝日新聞 オピニオン)

 日本人は問われています。責任ある行動が取れるかが問われています。 日本が、日本人が先の戦争加害を真摯に反省しているかを世界中の人達が注視していることでしょう。

 「大村市九条の会」はこれからも「集い」を通じて平和運動を続けてまいります。  「平和憲法」を世界に拡げましょうとお訴えして、「九条の会」に集う全国の皆様方への連帯の挨拶と致します。
                                   

2013年5月3日 (文責:谷川)

掲載日:2012年5月3日