「特集T」「麻生発言」および「注意すべき改憲に向けた動き」


掲載日:2013年9月4日

「特集T」「麻生発言」および「注意すべき改憲に向けた動き」
 主に「NHKニュース」、「朝日新聞」の見出しを備忘録としてまとめたものです。今後ともご活用いただければ幸いです。

1)麻生太郎副総理兼財務相氏発言(暴言)について (8月2日報道)
(1)7月29日、「国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)」が開いた東京都内でのシンポジウムで「いつの間にか騒がれるようになった。・・・・・ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰 も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」と述べる。

(2)8月1日。国内外から批判相次ぎ、先の発言を撤回。「私の真意とは異なり誤解を招いたことは遺憾。・・・・  喧騒にまぎれて十分な国民的理解、議論のないまま進んでしまった悪しき例として挙げた」と釈明した上で「私がナチスやワイマール憲法にかかわる経緯について極めて否定的に捉えていることは、全体の流れを見て   いただいたらはっきりしている」とも述べ、ナチス政権を肯定する意図のないことを強調。

(3)政権内の反応:「撤回は当然だ。早い方がいい」(安倍首相)。「まずい発言だ」(官邸スタッフ)。ユダヤ人 団体から反発が出たことに「最悪だ」(外務省幹部)。「右傾化批判が強い中国や韓国に米国が同調すれば国際社会を敵に回す」「安倍政権の歴史認識はやはり危険だとされるのが一番困る」(官邸スタッフ)と政策遂 行への影響を懸念する。

(4)自民党の反応:派閥領袖は「撤回するなら初めから言うなという話。首相をやっていたことが信じられない何がポスト安倍だ」と批判。又、別の領袖は「まともな配慮があればこんな事例は出てこない」と苦り切る。 石破幹事長は「この問題について論評することはない」。公明党の山口代表は「枢要な立場にある政治家は発言に配慮が重要」と述べるにとどめた。

*自民党国体幹部は「秋の国会なら追及できるが、その前にいろんなニュースがあって忘れられる」と言い切る。

(5)野党の反応:海江田民主党代表「ナチスから学ぶべきものは一切ない。・・・発言は撤回して済む問題ではない」と批判し、安倍首相の任命責任を追求する考えを示す。日本維新の会の橋下共同代表は「かなり行き過ぎたブラックジョーク」だと記者団に語る。共産党の志位委員長「むき出しのナチズムの肯定で民主主義否定の暴論だ。日本の国政に参加する資格はない」と議員辞職を要求し、衆参予算委員会での集中審議を求める。

(6)国内識者の反応:放送プロデューサーのデープ・スペクターさんは「政治家の公の場の発言とは思えない言葉の軽さ。まるでスナックでの会話だ」と呆れ、「麻生さんはユダヤ人虐殺を描いた映画『シンドラーのリスト』を見て歴史を勉強するべきだ」と指摘。

 作家の半藤一利さんは「ワイマール憲法は『ある日気付いたら変わっていた』というものではない。・・・暴走して手が付けられなくなってしまったのが真相だ」「ドイツ国民はそうした政治の怖さを経験し、反省している。ナチスを手本に改憲を目指そうなどとは、とんでもない」と釘を指す。

  広渡清吾・専修大教授(ドイツ法・比較法社会論)は「誤解に基づく発言で(事実はワイマール憲法を廃止せず、全権委任法を作り憲法を骨抜きにした。ナチス憲法なるものは存在しない日本の政治家のクオリティー(質)の低さを表した。改憲を論じるのに、不確かな知識で軽々に論じている。発言の撤回以前に、不見識を恥ずべきだ。ドイツでこんな発言をしたら、即座に議員辞職です」と指摘。

  改憲派の小林 節・慶応大学教授(憲法学)は「ナチスは政治に暴力を用い、立憲主義を否定した。それ に学べと言うのは論外だ。・・・内外に恥ずかしい発言で、安倍首相の責任で辞職させるべきだ」という。 「ホロコースト記念館」の大塚 信館長も「無知をさらけ出した発言だ。幅広い歴史を知るべき政治家がこ ういった発言をするのは恥ずかしい」と嘆く。

  ユダヤ系米国人で、祖父母がホロコーストを逃れて渡米したというロニー・アレキサンダー神戸大学院教授(国際関係論・平和学)は「繰り返してはならない歴史についての発言で、恐ろしい」。「欧米の常識では、 政治家が600万人のユダヤ人を殺したナチス政権を引き合いに出すことはあり得ない」「日本は世界に向け て平和を愛する国だと言いながら、こういう発言があると欧米諸国やユダヤ人が反発するだけでなく、アジ アの国々も不安になる。大臣を辞めるのが筋ではないか」と語る。

(7)国外の反応:米国の代表的ユダヤ人人権団体{サイモン・ウィーゼンタール・センター}は、「どんな手口をナチスから学ぶ価値があるのか」とする批判声明を発表。エイブラハム・クーパー副代表は発言撤回に一定の評価はしつつ、発言の経緯の説明を求める構えを見せる。   過去を引き合いに出されたドイツでは、「ナチス憲法」を挙げるといった麻生氏の発言に驚きを隠さない。

 秘密国家警察ゲシュタポなどがあった跡地にたつ展示館「テロの地勢」の館長アンドレアス・ナハマ氏は「ナチスは合法性を装い、憲法を失効させた。麻生氏は何を話しているのか、分かっていないのではないか」と語る。ベルリン自由大学のハーヨ・フンケ教授も「麻生氏が言うような『誰も気づかないで変わった』などということはまったくない。信じられないほど間違った発言だ」と指摘する。

*ヒットラーは「授権法(全権委任法)」を成立させワイマール憲法を機能停止に追い込んだ。

 中国国営新華社通信傘下の新華ネットは「日本の政権幹部がキツネのしっぽをさらけだした」との見出しで論評し、発言は「憲法改正」「軍備拡張」を進めようとする安倍政権の本質を示すとの内容だ。

 韓国メディアも麻生市の過去の発言、失言をこぞって取り上げ、4月の靖国参拝を改めて批判している。韓国政府関係者は「問題は麻生氏が政権ナンバー2ということだ。韓国としては改憲への牽制も含めて厳しく指摘せざるを得ない」と話す。

(8)「麻生発言」を真正面から取り上げない公共放送NHKの不思議(8月3日付):
 報道されたのは1日正午のニュースの中の2分50秒だけで、麻生氏が「撤回」したことと、同氏の釈明発言と菅官房長官の擁護発言を伝えるだけのものでした。1日、夜の民放では10分23秒にわたり、克明に伝え、NHKと好対照をなすものでした。

2)「麻生発言」の裏に潜む改憲に向けた注意すべき動き
(1)安倍首相は「憲法改正に向けて頑張っていく。これが歴史的使命だ」(8月12日:山口市)と憲法改悪に執念をみせます。そこで政権が秋の臨時国会で狙うのは、18歳投票権や公務員の国民投票運動の制限などの「宿題」を法律本体から切り離して棚上げし、国民投票がいつでも実施できるように「改憲手続き法の改悪」と思われます。

(2)安倍首相は、「国家安全保障基本法」は議員立法ではなく、内閣提出の法案(閣法)として提出することを明言しています。「閣法」は「内閣法制局」の同意を得たうえで閣議決定しなければなりません。「集団的自衛権についての解釈見直し派」といわれる小松一郎氏を内閣法制局長官に起用したことの意味は鮮明と言わねばなりません。

(3)他にも「秘密保全法」「自衛隊海外派遣法」を制定し、「ワイマール憲法」と同じように「憲法九条」の機能停止、形骸化を狙っています。

 こうした厳しい情勢の中、次世代に平和憲法を繋ぐために私たちの運動は益々重要さを増しています。 「大村市九条の会」もこれまで以上に危機感を持って活動して行かねばと心新たにしています。   「大村市九条の会」 事務局

 

2013年9月4日  大村市九条の会 事務局