大村市九条の会

会報 第2号

発行:2004年12月
神話 ― トリニティーあるいは三位一体 ―

始まりはたった三つだった

ニューメキシコ州アラモゴード
トリニティー・サイト
その三位(さんみ)一体(いったい)と呼ばれる砂漠で
最初の「ヒバクシャ」となったのは
ガラガラヘビだった

一九四五・七・十六
三つのうちのひとつが
そこで世にも恐ろしい産声(うぶごえ)をあげた
その声は大地を揺るがし

やがては

人類を何世代にもわたり欺(あざむ)き
裏切り、傷つけつづける「神」となっていった

始まりはたった三つだった
「チビ」と呼ばれた
「神」の一人が
一九四五・八・六

ヒロシマという小都市の上空で
黒い雨を降らせた
その三日後、
美しい港町ナガサキに
「デブ」というニックネームの
「神」が舞い降りた




始まりはたった三つだった

二つの街に舞い降りた神々は
その意味さえ知らない人々を
コンクリートに焼きつけ
一瞬のうちに気体と化し


体内に永遠の十字架を刻(きざ)みつけた

ヒロシマ、ナガサキは
現代を生きる人々に「思想化」されず
死と隣り合わせの「ヒバクシャ」は
日常に突き刺されたトゲでさえもない

始まりはたった三つだった

ニューメキシコ州アラモゴード
トリニティー・サイト
その三位一体と呼ばれる砂漠に今
「原爆博物館」という名の
「神殿」がそびえているという

※「三位一体」……キリスト教でいう「神・子・聖霊」のこと。決して小泉政権の政治改悪のキャッチフレーズのことではない。

詩:森ぶんめい

広島と長崎に落とされた、世界に類例のない二つの原子爆弾の他に、実はもう一つ開発されていて、アメリカのトリニティーで爆発実験が行われていました。

作家・林京子さんは、「トリニティからトリニティヘ」へ『長い時問をかけた人間の経験」平成十二年)という小説を書いています。林さんは『祭りの場-(昭和五〇年、芥川賞受賞)以来、長崎での被爆体験を原点として、一貫して原爆の不条理を問い続けています。

人類最大の愚挙が遂行されて以来、六〇年が経過しようとしている現代においても、原子爆弾は世界政治の暗黒の圧力として利用され、数え切れないほど増産され続けています。

活水女子大教授:田中俊廣