大村市九条の会

会報 第6号

発行:2005年12月
監視社会の恐怖

 プロ野球の開幕戦。試合開始前に日の丸が掲揚され、君が代が斉唱される。警察の監視カメラがたちまちのうちに、5万人の観客を次の三通りに分類する。
1)起立して歌った善良な市民
2)起立したが口はあけなかったよう注意人物
3)起立しなかった危険分子。

 二〇〇×年、アメリカが戦争を始めた。日本政府もブッシュ大統領の要請で自衛隊を派兵する。会社からの帰り道、酔ったサラリーマンが、つい毒づいた。「戦争なんか始めやがって。ブッシュの馬鹿野郎。小泉のオタンコナス」。

 翌日の夕刻、彼は人事部に呼ばれ、馘を言い渡された。はっきりした理由は教えて貰えなかった。あり得ないとはいえません。

 すでに防衛庁が情報公開を求めた人たちの身元を洗い出し、個人情報リストを作成し、庁内LANで見ていた事実が報道でも明らかになっているのです。高速道路の監視カメラ(警察は防犯カメラと呼ぶ)。携帯電話やカーナビのGPS。コンビニや銀行のキャッシュカード。

 僕たちのまわりにはありとあらゆる個人の情報が行きかっています。それを拾い上げ、データベース化し、見も知らぬ個人のカルテを作ることは、ある機関や組織にとってはいとも簡単なことなのです。(文)

ドキュメント映画
時代を撃て・多喜二


2006年
1月29日(日)

大村市民会館
大会議室にて上映

前売り券(1,000円)
発売中

 本作品は、小林多喜二(1903-33)の生誕100年・没後70年を記念して製作されたドキュメンタリー映画です。

 「ストーリー」にもあるように、多喜二と直接つながりのあった人から影響を受けた人など色々な人に多喜二を語らせ、多喜二の作品の朗読や多喜二に関する映画の映像なども使いながら、多喜二の生涯を丹念に追って作られています。

 90分弱の映画で、よくこれだけの人を登場させ、しかも多喜二の生涯を追えたなと感心しました。

 さらに、「阪妻」映画から始まる意外な出だしや、昨年明らかになった志賀直哉との交流の新しい事実は興味深いものでしたし、多喜二の滞在先・七沢温泉福元館の長女・古根村初子さんが多喜二が風呂で口ずさんでいたブラームスの「日曜日」を暗唱したり、上山初子さんが「いつも私不思議に思うのは、多喜二さんをあんな目にあわせて、死ぬような事をした者でも罪にならないもんですか?」と述べるシーンはよく引き出されたものです。

 この3月に東京高裁は、『改造』や『中央公論』編集者らに対する特高の大弾圧事件・「横浜事件」の再審開始を認める決定をしました。両誌とも多喜二の小説が掲載された雑誌であり、特高は「小林多喜二の二の舞を覚悟しろ」といいながら拷問を行ったといわれています。

 自衛隊が海外に派兵され(映画では自衛隊の映像も出てきますが、これは使わずに見る者に解釈を委ねた方がよかったと思います)、国内ではビラ配布弾圧事件が起きています。「多喜二の時代」は終わっていないし、多喜二から学ぶべき事はたくさんあります。