雑感(その1)
満月
美しい満月を観ると、遠い遠い夜のことを昨日のことのように思い出します。
山口県徳山市に住んでいた小学二年生のときのある夜、目が覚めると隣にいるはずの母の姿がなく、六畳二間の社宅の中を探し、お縁を見てみると、小さな庭に立ってまん丸なお月様を見上げている母の姿がありました。
萩市から引っ越してきて、しばらく経ったころだったと思います。
家の前には田んぼや畑が広がり、高い建物もなく、見晴らしのよい場所でした。
三十歳を過ぎたばかりの母にとって、ふるさとや萩市で過ごした日々が懐かしく、美しい満月を観て、いろいろと思いだしていたのでしょう。
そのうしろ姿を見たときの私は「どうしたの?」というくらいの気持ちだけだったと思いますが、年齢を重ねても、あの姿は胸から離れることはなく満月を観るとお月様の中にあのときの母の姿が浮かびます。
2016年8月24日 寄稿 T・Y 氏(大村市在住)