2008年5月10日開催 大村市九条の会、「憲法を守る集い」の報告


 あいにくの雨でしたが、講演会に参加した36名は予定の時間を大幅にこえる井田洋子先生の熱のこもったお話しに聞き入りました。

  講演のあとの質疑応答でも多くの質問がだされ、実りある講演会だったと思います。 講演では、これまでの「憲法改正」の流れと直近の憲法改正を巡る情勢についてお話しいただきました。 内容についてはメモをおこしながら要点を箇条書きに致します。(順不同 文責:谷川)

) 憲法「改正」と憲法「制定」の違いは、現憲法の主権在民・基本的人権・平和主義を柱とする基本を堅持した上での部分的改定が「改正」であり、「制定」とは現憲法の根本的な条項の変更を含めた新しい憲法の制定にほかならない。ただし、九条の平和主義を日本国憲法の改正の限界と考えるか否かについては見解が分かれている。

 自民党の改正案では、国家のための国民という位置づけの色合いが強調されており、憲法は権力を縛るものという近代以降の国家の基本的立場に照らせば、国民を縛るという逆転した発想は世界の憲法趨勢とかけ離れたものと言わざるを得ず、その意味からは自民党案は「制定」と言うべきであろう。

2) 自民党改正案では「自衛軍は・・・国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して・・・国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」とあるが、国際貢献の手段として一足飛びに軍事力に繋がるのか、軍が本当に国民を守るのか。

 むしろ軍事力を保持するが故に国民の生命・財産が危険に曝される危険が強まる可能性があるのではないか。 又、国際貢献との視点でみても、日本の難民受け入れ実績は米・仏・独・などに較べ極端に少ない。この一例からも日本のやるべき国際貢献は他に幾らでもあると思われる。

3) 改憲派はその根拠として声高に「押しつけ論」を主張してきながら、他方ではアメリカ合衆国への協力を全面に押し出し、かの国の求める集団的自衛権、個別的自衛権の必要性を唱えるという矛盾をいかに捉えるか。巧みな言葉の使い分けに惑わされてはならない。

4) 現在、「改正」の最大の理由として、現憲法は「時代に合わない」という点が挙げられているが、時代に合わせるとは、そもそも何を意味するのか。さらに、憲法に書かれるべき理想を単に時代に合わせることが正しい選択なのか。

 「時代」を超えて守らねばならない価値観、尊重されるべき価値観があるはずである。1789年のフランス人権宣言で掲げられた「基本的人権」という価値は今日でも国際社会においてで重要な政策を決定する際の最優先事項の一つとして生き続けている。

*1 日本政界の憂うべき現状の一つとして「政教分離」の不透明さが言われて久しい今、先生ご専門の「フランスの政教分離」と「日本の政教分離」とを比較したお話しを聞 く機会を持てればとの思いを強く抱きました。

*2 現役の先生だけに語り口調が学生向けで、生徒として授業を受けた頃のことが思い出されて懐かしさと共に何とも言えない新鮮さを感じました。 先生への感謝を込めて先生の更なるご活躍をお祈りしまして今回の「集い」の報告と致します。     

(掲載日:2008年5月16日)