「日本国憲法の改正手続きに関する法律」施行を一年後に控えて |
「日本国憲法の改正手続きに関する法律」施行を一年後に控えて 2009年5月18日 「大村市九条の会」 代表 谷川 成昭 「放浪記」2,000回上演を達成された森光子さんが平和への想いを次の様に語っておられます。 「私、世界中のすべての人が戦争なんて嫌いなものと思っていました。誰も喜ばないし、戦争してもなにもプラスにならない。でも違うんですね。そう思わない人がいるんですね。そういう人は嫌いです。戦争は何があってもしてはいけません」。(09・5・10 日刊スポーツ 文化・芸能欄) 兄が戦死。自らも戦地慰問で特攻兵士を見送る体験をお持ちの森光子さんの言葉には千金の重みがあります。 「大村市九条の会」も森光子さん同様、「平和を愛し再び戦争をしない」との想い一つに護憲運動を続けて来ました。しかし憲法を巡る情勢は九条のみならず、格差は医療、教育にも及び、今や25条が保障する生存権さえも危うく「主権在民、基本的人権、平和主義」を柱とする現憲法の危機を実感する毎日です。 さて、皆様ご存じの通り「日本国憲法の改正手続きに関する法律(通称:国民投票法)」は来年5月18日から施行されるという、待ったなしの状況にあります。 この法律には自民党が党是としてきた「自主憲法制定」の執念が込められています。国民の権利・自由を制限する一方で勤労、納税、子供に教育を受けさせる三つの義務に新たに公(国)に対する義務を加え、更には集団的自衛権の行使を可能にし、アメリカの要求に応えて自衛隊が海外での紛争に参戦できる憲法に変えることを主目的とする改憲手続き法であることもご案内の通りです。 悲願成就に向けて莫大な資金力を背景になりふり構わぬ戦術を駆使してくることも容易に想像できます。 総務省はこの4月に「改憲手続き法」の周知のためにと6千万円余の税金でパンフ500万部を作成、全国の自治体の窓口を通して広く国民に配布しており、「改憲」のための準備は着々と進められています。 「海賊対処」派兵新法が衆議院を通過しました。この法案は「派兵恒久法」に道筋をつけるものです。 大日本帝国憲法下における先の大戦の責任を政府や軍部に押しつけることはできても、主権在民の現憲法下では日本の行く末に全責任を負うのは投票権を有する国民一人一人であることは明らかです。 「改憲派」の野望を阻止するには「護憲=非戦・平和」を希求するうねりの裾野を拡げる不断の運動の重要さは勿論ですが、最悪の結果が出た後で「やるだけの事はやった」「全力を尽くした」といった自己満足で事足りる次元の話ではないことを常に肝に銘じながらの運動の展開が肝要かと思われます。 「九条の会アピール」のお一人で昨年12月5日、89才で亡くなられました加藤周一さんは2000年のNHKインタビューで、「鬼畜米英」を口にしていた国民が敗戦を機に、見事なまでに「拝米」「アメリカ一辺倒」を受け入れた「国民性」とは一体何なのだろうと疑問を投げかけ、更に続けて、日本は、もしくは日本人は「現在の事、目の前の事に関心が強く、過去、未来との関係において現在の行動を定義する、もしくは考える」習慣に欠けているのではないかとの趣旨の発言をしておられます。 又、1971年(昭和46年)、39才でこの世を去った小説家であり京都大学の教官として当時の学生運動の理解者でもあった高橋和巳氏の著書「悲の器」の中の一文、「未来を考慮するに不得意な日本の知性の悲惨さ・・・」との記述は「国民性」についての加藤氏の指摘と重なります。 多大な犠牲の上に生まれた「平和憲法」を変えようとする目論見は、そもそも憲法とは権力を縛る一方、国民の権利・自由を保障するものであるとの基本原則に背を向け、過去に学ぼうとする謙虚さや賢明さを持ち合わせず、併せて未来を先見する資質に欠けた人達の暴挙と糾弾せざるを得ません。 「核兵器廃絶・世界平和」を掲げて一万人署名活動を続ける高校生の皆さんのスローガン「微力だが無力ではない」を皆様と共に自らの確信として次世代に責任の持てる国民の一人であり続けたいと願うものです。 |
(掲載日:2009年5月25日)
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