2013年2月9日開催、2012年度・第5回「集い」、講演会・報告書
「集い」では「フクシマの原発事故」が日本のみならず世界中に突きつけた「原発」の持つ危険性について学ぶ「講演会」を企画しました。「原子力発電」が内包する危険性についての関心の高さでしょう。久し振りに70名を超える参加者でした。 今回は市民運動「大村キンモクセイの会」のご協力をいただいたことをお礼と併せてご報告致します。
*「大村キンモクセイの会」は「原発ゼロ」を目指す官邸前行動に呼応する運動として毎週金曜日午後4時から30分間大村駅前で街宣活動をしています。今こそ「子ども達のために大人が声を挙げる時」です。機会があれば是非ご参加下さい。ただし、雨天時・荒天時は中止です。
「命の軽視に反対する意思表示」という意味では「原発反対運動」と「大村市九条の会」の「護憲運動」とは同列と考えます。それを象徴する発言の一つが「原発の存在=核抑止力論」です。
「原発ゼロ」「護憲」運動の前には大きな壁が立ちはだかり、困難な運動であることも共通しています。 「原発輸出拡大」を望む一方で「危険だから国内での稼働ゼロ」にすると言える道理もありません。「政・官・財・学」が一体となって「新しい安全神話」を作り上げ、その「虚構の安全メッセージ」が新聞・ テレビなどを通じて私たちに降り注いでくることでしょう。
しかし、私たちは再び欺かれてなりません。 「護憲」運動も同じです。「戦争のできる国」にすれば軍事費の増大は必然です。更に輸出三原則を破棄し て金儲けに繋げたい「軍需産業」にとって「平和憲法」は邪魔な存在そのものです。そうした勢力はあらゆる手段と機会を駆使して改憲を目指します。それに立ち向かうには一人一人の反対の声を結集するしかありません。
「フクシマ後の時代を生きるために」という演題で講演いただくことになりました「藤田祐幸先生」は、 1979年のスリーマイル原発事故以後、原発の持つ破局的な危険性を確信され、1986年のチェルノブイリ原発事故現地にも何回も足を運ばれ、市民科学者としてあらゆる機会を通してその危険性を訴え、警鐘を鳴らし続けてこられました。
市民科学者とは、在野の立場を貫き、「科学の知」を武器に権力を監視する科学者の方達のことだそうです。情報操作が取り沙汰される中、私共にとりまして市民科学者の存在はこの上なく心強いものです。
講演はスクリーンに映し出される映像を示しながらの説明で分かりやすく、地球上の生命の源は宇宙圏の太陽からから供給される光と、地球の大気圏、大地(土壌圏)そして河川・海(水圏)の間で繰り返される循環サイクルの見事な調和によって維持されているメカニズムを実感できました。
「フクシマ」から放出されて空気中に拡散していく放射能物質の流れや海洋に汚染が拡がる様子など視聴覚による講演の効果絶大でした。広島・長崎に投下されて「死の灰」に変わったウラニウムは1s未満なのに較べ、原発1基で年間1トンの核分裂に依拠するウラニムが出るのだそうです。あの広島、長崎の原爆被害さえ壮絶極まりないものなのにその量の大きさによる被害は想像だにできません。
放射される物質の量と併せて「原爆」と「原発」による放射能汚染の拡がりにも決定的違いがあり、広島、長崎には今や人が住め、草木も戻りましたが、原発による被害の収束には遙かに長い天文学的時間を要することになるのだそうです。
日本には50基余の「原発」があり、未だ使用済み核燃料の再処理法が確立されていない現状です。今後40年間稼働が続けられれば一体どういうことになるのでしょうか。放射性廃棄物(ガレキ)についても同様です。これ以上汚染を拡散させては、将来日本には人が住めなく なる危険さえあるとし、農地をなくした人には他の地域の休耕地を利用して貰い、また被災地の子ども達を安全な地域に避難させるような国家的プロジェクトが今すぐにでも必要だと力説されました。
今の世は目先のことだけに気をとられて動いているが、アメリカンネイティブ(イロコイ族)の人達は「セブン・ジェネレーション(7世代)」といって、200年先の子孫のことを考えて物事を決めていくのだそうです。その他にも「原子力に防災はない」「科学を疑え」など教訓にすべき多くの事をお話しいただきました。 最後に「人は電気がなくても生きていける。人は水と空気と大地があれば生きていける」ということを「吾唯知足」というスクリーン映像で講演を結ばれました。
感想文には「多くの人がこうした講演を聴くことのできる機会が欲しい」「感銘を受けた」「衝撃を受けた」 「何も知らされないことに怒りを覚えた」「利益第一の企業に腹が立つ」「農村や森の大切さが分かった」「原発は倫理の問題なのだ」等の言葉が綴られており、参加者の皆様に喜んでいただいた事が伝わってきました。 藤田先生には改めて感謝を込めてお礼申し上げます。
事務局より
講演は映像でデターや図面を使って行われましたので、上記報告書は講演内容のほんの一部、概略をお伝えするものであることをご了解下さい。
尚、藤田先生は今回の講演とほぼ同様の内容で「平和文化研究 第33集」に寄稿されております。 ご希望の方は0957−54−5980 谷川までご連絡下さい。(在庫数10冊。無料ですが送料はご負担いただきます)
*「原発被害」を殊更に軽微だと主張してきた「山下俊一教授」が福島県立医大から長崎大学に4月1日付けで復職と報じられました。(2月5日付け) どういう「新しい安全神話」が発信されるか注視していく必要がありそうです。
*ドイツでは「原発は道徳的に存在してはならない」として国を挙げて自然エネルギーへの転換を目指していることはご存じの通りです。我が国の大多数の「政治屋」並びに「自らを有識者とお考えの学者さん」の顔は一体どちらを向いているのでしょうか。
私たちも「セブン・ジェネレーション(7世代)」とまでは言わずとも、せめて50年後、100年後を生きる人達に顔向けできないようでは、先の戦争責任を天皇、軍部の責任に転化するかのような同じ愚の繰り返しになり兼ねません。幸いにも私たちには「現憲法」によって選挙を通して自分の意志を一票に託す権利が保障されています。私たち一人一人が「平和憲法」を護り、「戦争をしない国」、「原発」に頼らない社会を目指し、身近なところから輪を拡げ、大きな「うねり」を起こしていくことが必要ではないでしょうか。
次回「集い」は5月の憲法記念日の前後を予定しています。4月早々にはご案内をお届けしますのでどう ぞお誘い合わせの上、多数のご参加をお待ちしております。
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